FACES

1.これまでのご経歴と現在のお仕事について教えてください。

大学では応用科学を専攻しており学卒で入社した繊維メーカー、2社目の半導体メーカー、現在在籍している積水化学でそれぞれ働きながら、その都度自身の興味と必要に駆られて生産工学の修士号、情報システムの博士号を取得しました。ですので、バイオ、機械の加工や半導体からソフトウェアまで一通り専門知識があります。現在は研究所の開発企画部という部署のエレクトロニクスグループグループ長を務めており、半導体部門と通信インフラの新規事業企画開発を行っています。これまでの3社全てで新規事業企画、開発から工場建設、移管というところまでを経験しているというのが私の強みです。そして、世界一のものを作る科学者になりたい、という子供の頃からの夢を今も変わらず持ち続けながら働いています。

2.あなたがこれまでに一番すごいと感じたイノベーションとは?

やはりiPhoneですね。ジョブズは既存を壊し、キーボードの文化と決別してタッチパネルの文化をつくりました。iPhoneが発表された時、私は積水化学6年目で新しい事業を立ち上げていたのですが、こんなことを考えている人がいるのだと衝撃を受け、日本では使用できなかったにも関わらずすぐにiPhoneを購入しました。
インターネットの普及により、時代の動き、人々の考え方の変化のスピードが速くなりましたが、
iPhoneの登場でそれは劇的に加速しました。アイデア自体はある意味組み合わせの妙なのですが、誰もやっていなかったところに切り込んだというところがすごくイノベーティブだなと思います

3.あなたがイノベーションに向けて挑戦していることを教えてください。

世界初のものを10年に1つはつくろうと思っています。20代の時には薄型のハンディカムの薄基板とDRAMメモリ製造用のカーボンウエハーを作り、30代ではナビ専用の高速LSI、40代では8GBのマイクロSDカード用エポキシ樹脂を開発し、昨年末には透明フレキシブル電波反射フィルムのプレスリリースを発信しました。今のところ10年に1つのペースは何とか守れています。世界初のものを作るために、国内外問わず自分に情報が入ってくるよう人的ネットワーク形成することを意識しています。様々な業界の方が私に相談しやすいよう普段から頼まれればノーと言わず、あらゆる分野においてアドバイスすることを心がけてます。その結果多くの企業や研究機関から連絡を受けるたびに、世界の困りごとを知ることができ、その根幹、本質を捉え人々が求めていることを提供しようとすることがイノベーションに繋がっていくのだと思います

4.あなたのONOFFスイッチは?

ONのスイッチが入りっぱなしになりやすいので、なるべく意図的にOFFにするようにしています。2つ方法があり、1つは自分が好きなことだけをすることです。土をいじりながら有機野菜をうまく作るための配合を考えたり、機械をいじったりと自分だけの趣味に没頭します。仕事で頭ばかり使っていると体が鈍るので、好きなものに物理的に触ることで感覚を研ぎ澄ますことができています。もう1つは何も考えない時間を強制的につくることです。私は滋賀県在住なのですが、数ヶ月に1度比叡山に修行に行きます。阿闍梨さんを尋ね1時間お茶たてて飲み、1時間読経するというのを24時間行います。始めは拝んでいる最中に様々な邪念が浮かんでくるのですが、半分を過ぎた頃から自分の中の全ての邪念を出し尽くし、考えることが何もない般若心経の『無』や『空』である状態になり、終わる頃には完全に心がリセットされ体からパワーが漲るようになります。新規事業開発で頭を悩ませる日が続くと自分の立ち位置やレイヤー、向かう方向がわからなくなることがあるので、体をリセットしたい時は土をいじり、心をリセットしたい時は比叡山へ登りON・OFFを切り替えています